下戸と酔っぱらい
サーカスの巡業でノルウェーに来た鳴海は、ダールの所に寄ると
たまたま訪れていたドミートリィにも歓迎され、あっという間に歓迎という名目の
酒盛りに付き合わされることになってしまった。
「まだお前飲めないのか。情けねえ。」
「うるせえ」
鳴海が一口飲んだだけで思わず吹き出した強い酒が入った瓶も、ダールとドミートリィは
どんどん空けていく。
ダールは食べ、喋りながら(というよりむしろ怒鳴りながら)豪快に杯をあけ、
ドミートリィは静かに、でもいつも微笑んでいて、いつのまにか空になったグラスに
また酒をついでいる。
鳴海はつまみだけを食べながら、ふと疑問に思ったので二人に聞いてみた。
「ずいぶん飲み方が違うけど、よく二人で飲むのか?」
「そうだね。言われて気付いたけど、ダールと飲むことが一番多いね。」
「なんでさ?」
「俺の酒量についてこれる奴がこいつだけなんだよ。」
「ずいぶんひどい言い草だね、ダール。」
俺にはよくわからないけど、いい飲み仲間なんだろうと鳴海は解釈した。
「なら、いろんな所に二人で飲みに行ったんだろう?しろがねだから世界中へ行くしさ。」
すると二人とも気まずい顔をして黙ってしまい、少しの間をおいてドミートリィが困った顔でポツリと喋った。
「…いや、二人で飲むときはどちらかの家か野外と決めているんだよ」
「なんでさ?」
鳴海が無邪気に尋ねると、ダールが怒鳴りだした。
「何でてめえはそういらねえ事をいちいち聞いて来るんだよ!!
昔こいつと酒場で飲んでたとき、何が原因か忘れちまったがこいつと殴り合いの喧嘩になったんだよ!
お互いしろがね、しかも俺は当然だがこいつも元軍人で体を鍛えてやがるからな、
一昼夜続く喧嘩になったんだ!
それで当然酒場は大破、その後店に賠償金払う羽目になるは、しろがねの仕事をほっといて修理を手伝わされるは、その挙句にルシール先生に大目玉喰らったんだよ!
それから自分の家で飲むか、何もねえ所で飲むことにしたんだ!!」
鳴海はやけくそになって吼えるダールの話すことに呆然としながら自分の数少ない酒盛りでの乱闘の記憶を思い出し、それが人の体力の五倍あるしろがね同士だったのだからすごいことになったんだろうと冷や汗をかいていた時にドミートリィがダールに反論した。
「何を言っているんだ、ダール。あの酒場はホテルの中のバーだったから、ホテルの3分の2を破壊して新聞沙汰になってしまってルシール先生から叱責されたんだろう。
しろがねが任務以外で目立った行動をとるなって・・ナルミ!!どこへ行くんだい!?」
ドミートリィの声を振り払い、ダールの家から全力疾走で逃げた鳴海は、
自分は何と言われようとも一生酒を飲まないと心に堅く誓うのであった。
これで何度め?と言われそうな酔っぱらいネタです。
西原理恵子ネタがやりたかったんです。
ここでは鳴海が仲町サーカスに入団していて、世界中を興行していて
しろがね達もみんな生きているという設定になってます。
パラレルです。夢見てます。
もうちょっと本編で見ていたかった人達ですから(泣)
鳴海がピエロの見習をしてるネタは他にもあるんで、機会があったら
出せたらいいなと思います。
ドミとダールの酔っぱらいネタも。
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